未来のためのデジタルアーカイブ(2)

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デジタルアーカイブの重要性やブロックチェーンの特徴を分かりやすくお伝えするために、前回に引き続き「屏風」を例にお話したいと思います。

屏風は、刀剣、漆器、扇などと並び、日本を代表する伝統工芸品であるとともに、古くから海外に輸出されていたことが知られています。

下記①~③の屏風はいずれも、約400年前に制作・輸出され、21世紀になってその存在が広く知られるようになったものです。

これらの屏風は、紙や木といった傷みやすい素材で作られ、装飾として高価な金が大量に用いられていることが分かっています。当時と今とでは、輸送リスクが比較にならないほど高いことはいうまでもありません。また、無事に海を越えてからも、各所有者の社会的立場上、屏風が大きな政変や戦乱に巻き込まれることは決して稀ではありませんでした。

このため、現在においても往時の姿をとどめた屏風が存在すること自体、奇跡に近いといえるかもしれません。

そして、屏風には発注者の意図や制作者の技術、描かれた建物や都市風俗など、当時の人々の生活文化に関する情報が豊富に含まれています。更に、屏風の補強のために使われた紙(下張り)には、当時の人々の日常が記された手紙や帳簿のみならず、軍事や外交に関する機密性の高い文書が再利用されている場合もあります。

しかしながら、下記表のように “?” が多い場合、屏風や下張り文書に含まれるデータを適切に分析し、有用な情報を引き出す上で大きな障害となります。

ブロックチェーンは、データの劣化・紛失・改ざんリスクを低減し、効率的な共有・取引・管理を可能にする技術です。この技術を活用することにより、 “?” の発生を最小化したデータのやりとりを容易に実現できます。

換言すると、ブロックチェーンとは、人々が過去の出来事や行いを深く探求し、現在そして未来を生きる上で必要な知恵や教訓を引き出す力をサポートする技術である、ともいえます。

次回は、より具体的に「ブロックチェーン上でのデータのやりとり」についてお話したいと思います。

屏風の名称 ①The Ôsaka Folding Screen(大坂図屏風) ②Paravent (byobu), six parts ③Biombo de Evora(エヴォラ屏風) 参考:安土山図屛風
テーマ 豊臣政権期の大坂城とその城下 京都の東部 織田政権期の安土城とその城下
制作者 狩野派以外? 狩野派? 狩野永徳?
制作時期 1591年以降 1579年頃
発注者 織田信長
発注金額
納入時期 1580年頃
輸出者(仲介) オランダ東インド会社?⇒アントワープの商人? イエズス会東インド管区巡教師アレシャンドゥロ・ヴァリニャーノ⇒天正遣欧少年使節
輸出時期 1643年? 1582年2月
購入者(譲渡先) ヨハン・ザイフリート(エッゲンベルク城の三代目城主) ローマ教皇グレゴリウス13世
購入(譲渡)金額
納入時期 1670~1700年? 1585年3~4月
その後の来歴 エッゲンベルク家⇒ハーバーシュタイン大公⇒グラーツ市⇒(第二次世界大戦時、城はソ連軍に占領される)⇒州立博物館ヨアネウム管理下で公開(1953年) 

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?⇒エドゥアルト・フックス(1912~1933年に購入?)⇒(ナチス政権下で没収又は売却)⇒?⇒アントン・エクスナー寄贈(1948年) 

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?⇒(1759年、ポルトガル国王がイエズス会士を国内追放)⇒? 

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? 

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現所有者/所在地 エッゲンベルク城博物館/オーストリア

 

ウィーン応用美術館(MAK)/オーストリア エヴォラ図書館、ポルトガル国立図書館/ポルトガル 

※六曲一双?の屏風の料紙は失われているが、日本におけるキリスト教布教関連の記録を含む一次資料(通称「エヴォラ屏風下張り文書」)の原本が現存し、上記機関に所蔵されている

現在の外観 八曲一隻の屛風を8枚に分割し壁面にはめ込み 六曲屏風(一隻のみ)

 

画像出典:
上部:①大坂図屏風/下部:②Paravent (byobu), six parts

参考文献:
高橋 隆博 (著・監修)/ 関西大学なにわ大阪研究センター (監修)『新発見 豊臣期大坂図屏風』、清文堂出版、2016年
アレシャンドゥロ・ヴァリニャーノ (著)/松田毅一 (編集) 『日本巡察記 東洋文庫』(Kindle版)、平凡社、2024年

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