未来のためのデジタルアーカイブ(3)
(前回の続き)
ブロックチェーンは「分散型台帳技術」と和訳されることがあります。データを一箇所に集中させず、同一のデータを複数箇所に分散して保管することで、データ消失や改ざんのリスクを低減しています。
この「データの分散管理」の概念は、かなり古くから存在します。
例えば、安土山図屏風 が描かれた時代、世界各地で布教活動を行っていたイエズス会では、次のようなルールにより、ローマのイエズス会本部と各布教地で同一の文書を保管することを定めていました。
①文書は各布教地からローマのイエズス会本部に送付する。
②送付前に写しを作成し、現地(日本では長崎)で保管する。
③各中継地(日本発の場合、マカオ→インド→ポルトガル経由でローマに到達)においても筆写・保管する。
日本で30年以上にわたり布教活動に従事したルイス・フロイス(1532-1597)の著書『日本史』の原本はすでに失われていますが、ポルトガルに現存する写しを通じ、完成後420年以上を経た今でもその主要部分を知ることができるのは、これらのルールの恩恵といえます。
それでは、ブロックチェーンによるデータの分散管理と、これら書面の分散管理との大きな違いとは何でしょうか。(以下、イーサリアムブロックチェーンを前提にお話しします)
物理的移動を伴わない前者の場合、データの作成・送信・保管・共有の効率性が著しく高く、かつ、データ紛失のリスクが非常に低いことは言うまでもありません。
最も大きな優位性は、暗号技術と合意メカニズムにより、更に強固な改ざん防止を実現していることです。
ブロックチェーン上に記録されたデータに耐改ざん性があるからこそ、私たちは安心して意思表示を行い、不特定多数の他者と取引をすることができます。
そして、そのブロックチェーン上のデータは、いつ、どこで、誰によって生成されたかにかかわらず、イーサスキャン(Etherscan)などのブロックチェーンエクスプローラーにより常時確認できます。
例えば、NFTマーケットプレイスで成立した取引情報(取引当事者間のNFT及び暗号資産の移転履歴を指し、以下「取引履歴」といいます)は、管理者により当該サイト上で非表示化できますが、ブロックチェーン上ではその管理者権限を行使することができません。イーサスキャンなどのツールを使用することにより、いつでも、かつ誰でも取引履歴を閲覧することができます(※1)。これは、NFTマーケットプレイスのサービスが終了した場合でも同様です(※2)。
※1 弊社のNFTマーケットプレイス「問茶会」上では、取引成立後のNFTは取引当事者にのみ表示される設計としていますが、イーサスキャンでは、検索対象のNFT(ex.デモNFTのToken ID:11)は元より、取引当事者のウォレットアドレス(ex.デモアドバイザー、デモ相談者)などからも取引履歴を検索可能です。
※2 NFTの画像やメタデータがブロックチェーンとは別の場所(オフチェーン)に保存されている場合、保存先事業者のサービス停止その他の理由により当該保存サービスが使用できなくなったときは、それらにアクセスできなくなる可能性があります。
今月4日の所信表明演説において石破総理が繰り返し述べられたとおり、日本においては急速に人口減少が進展し、自治体・企業ではより効率的・効果的な事業運営を推進する必要があります。
弊社においても、ブロックチェーン、生成AIはその課題解決に資する新技術であると考えており、クライアント、ユーザーの皆様のご期待に沿うサービスを提供できますよう鋭意準備を進めております。具体的な内容については次回以降、お話させていただけますと幸いです。
画像出典:Colbase
アブラハム・オルテリウス作「アジア新図」、ベルギー 1610年頃、九州国立博物館蔵
参考文献:
浅見 雅一著『キリシタン教会と本能寺の変』、KADOKAWA、2020年