起業家にとっての京都(2)
日本において、マンガ、アニメ、ゲーム等のコンテンツ市場規模は2022年に14兆6,786億円(国内GDPの2.61%相当)に達しています(株式会社ヒューマンメディア調べ)。
日本政府は先月、これらのコンテンツ産業を「基幹産業」と位置づけ、海外展開を推進する方針(「新たなクールジャパン戦略」)を発表しました。
先日京都で開催され、国内外から1.2万人以上が参加した「IVS Crypto 2024 KYOTO」(主催:Headline Japan/京都府/京都市)においても、「web3やAIなどの最先端技術」×「コンテンツ産業」はホットなテーマの一つでした。
大人たちがよってたかってアニメやゲームの話で盛り上がることを快く思わない方もいらっしゃるかもしれませんが、いわゆるこれら「サブカルもの」が政治や産業と密接に結びついてきたのも、長い日本の歴史文化の特色の一つであると思います。
約1000年前の京都の上流貴族社会における「サブカルもの」とは「物語」を指し、女・子供の読み物とされていました。あの『源氏物語』も最初はそのような扱いだったようですが、作者である紫式部の日記によれば、のちに賢后と称えられる中宮・彰子の発案の下、天皇のために豪華な冊子が精鋭のチーム体制で制作されたと伝わっています。
また、冒頭の源氏物語絵巻のうち現存する最古のもの(国宝指定:徳川本/五島本)は、それから約100年後の白河・鳥羽院政期に制作されたといわれています。当時及び後世の貴族が残した記録によれば、それはまさに国家の一大事業ともいえる時の為政者肝いりのプロジェクトでした。
時は流れ、私たちの生活はテクノロジーの進化により非常に便利になりました。昔は髪を乾かすだけで半日、絵を完成するのに何日も要していましたが、今は画像生成AIに簡単な指示をするだけで、ドライヤーで髪を乾かすよりも早く一定レベルのコンテンツ(冒頭の絵の左上画像)に仕上げてくれます。
ただし、どれほど最先端の技術を駆使したとしても、源氏物語に匹敵するコンテンツを創造することは極めて難しいように思います。
最新の生成AIを駆使すれば、確かにあっと言う間に、約100万字の文章、400名以上の登場人物から構成され、総計795首の和歌を作り、70年以上にわたる長編ストーリーを完成させることができるかもしれません。
しかしながら、冒頭のAI画像の若い女性は、約900年前に描かれた引目鉤鼻の姫君たちよりも現代人に近い外見にもかかわらず、何かが欠けているように感じます。
弊社は最先端技術を活用しつつ、これからも人間だからこそ提供できる価値にこだわり、サービス開発を進める所存です。そしてこの「AIが生成したものに欠けている何か」について、またの機会に皆様と議論を深めることができますことを楽しみしております。
絵巻画像:国立国会図書館「NDLイメージバンク」を元に加工
「源氏物語絵巻 東屋〈一〉」(模写)、1911(明治44)年
AI画像:Microsoft社のImage Creator from Designerツールにより生成