レオナルドの馬
「ルネサンスの巨匠」「万能の天才」。
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)と聞くと、どこか手の届かない存在のように感じられます。
けれど実際のレオナルドは、決して “才能だけで世界を変えた人” ではありませんでした。
本編では、「馬」を手がかりに、その姿をたどります。
レオナルドがミラノ公国のために構想した騎馬像は、高さ8メートル超、青銅70トン。
馬は後脚だけで立ち上がり、敵を踏みつけるという斬新なポーズ。
そして、それを実現するために考案された膨大な設備と工程。
自ら構想し、試し、また描く―。
残された記録に刻まれたのは、「諦めずに挑戦し続けた人間の執念」。
しかし、その十数年にわたる壮大な計画は戦争によって中断されます。
青銅は大砲へ転用され、粘土原型は侵攻したフランス兵の標的に。
自らの創作が一瞬にして奪われる現実。
レオナルドが戦争を「最も残酷な狂気(bestialissima pazzia)」と記した背景が、静かに浮かび上がります。
それでも、創作の火は消えることはありませんでした。
500年後、異国アメリカの地でチャールズ・デントらが「レオナルドの馬」の復元に挑みます。
ラファエロ(1483-1520)は『アテナイの学堂』でレオナルドをプラトンの姿に重ね、
ルーベンス(1577-1640)は『アンギアーリの戦い』の模写を通じて彼のこだわりを未来へと手渡しました。
未完となり、破壊され、失われながらも、なお受け継がれてきたレオナルドの創作。
彼の “執念” は、後世の人々の心に火をつけ、形を変えて生き続けています。
現代は、一人ひとりが “創作者になれる” 時代。
レオナルドがたゆまず歩み続けたように、当社も皆様とともに創作の可能性を広げてまいりたいと思います。
画像:レオナルド・ダ・ヴィンチの手書きのスケッチ