古筆切とNFT
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心惹かれるアート作品名の一つは「翰墨城」(かんぼくじょう)です。古筆の断簡をコレクションしたアルバムを手鑑(てかがみ)と呼び、中でもとりわけ貴重な手鑑に「翰(筆)と墨によって築かれた城」とネーミングした古人の感性には、はっとさせられるものがあります。
日本人は希少なものを細分化することで、長く大切に守り伝えてきました。
例えば前述の古筆は、元の巻物や冊子から断裁され、アルバムや掛け軸などに形を変えながら、観賞用、学習用、贈答品として大変珍重されました。
そして、和歌や筆跡から古き時代の作者をしのび、心の友としてきました。また、作者に対してのみならず、作者や作品の芸術性を深く理解した所有者への敬意を込めて、「本阿弥切」「尾形切」など、断簡に所有者名が冠されることもありました。
その価値を知る、生かすには一定以上の努力、目利きが必要であるものの、歴史の風雪に耐え、人間の一生の何十倍も生き続けてきた作品は、たとえほんの一片であっても圧倒的な存在感、膨大な情報量を誇っています。
NFTの技術は、世の中の希少なものを細分化し、分配することに非常に適しています。
私はこの最新の技術と、日本の伝統的な価値観を組み合わることで、事業目的である「よりよい社会を次世代につなぐ」を実現したいと考えています。その具体的な方法については、時機を見てお話ししていきたいと思います。
画像出典(上):MOA美術館
国宝 「手鑑 翰墨城」、奈良~室町時代(8~15世紀)、MOA美術館蔵
画像出典(中央):ColBase
国宝「手鑑 藻塩草」、奈良~室町時代(8~15世紀)、京都国立博物館蔵