権力と馬(1)-死後も、一緒に

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馬との出会いによって、人類は新しい可能性を手に入れてきました。

そして古代には、馬をどう用いるかが国の行く末を左右しました。
ときに戦場を駆ける軍馬として、ときに権威を示すしるしとして。

そこで今回と次回は、「権力と馬」をテーマにお届けしてまいります。
初回の舞台は、秦の始皇帝(紀元前259-紀元前210)です。

古代の中国では、死後の世界は「現世の延長」と考えられていました。

始皇帝は、死後も強大な権力が続くことを願い、
自ら指揮して巨大な陵墓と大量の俑(よう)をつくらせたといわれています。

その一つが、「兵馬俑坑」。

兵士の像は、一人ひとり顔立ちも装いも異なり、
実在した人物を忠実に再現したといわれています。

一方、役割ごとに整列した軍馬たちは、驚くほど同じ体つき、同じ姿勢をしています。

際立つのは、個性ではなく統一感。
それは、軍馬に対する選抜基準が、きわめて厳格だったことを物語っています。

もとは馬の飼育を得意とする一部族にすぎなかった「秦」。

彼らは、軍馬の育成・管理に関する高度な技術を武器に国力を高め、
ついには中国初の天下統一を成し遂げました。

始皇帝を守るかのように、
東の方角を向いて整然と並んだ八千体近い兵士と数百頭の軍馬の像。

馬と共に頂点を極めた始皇帝だからこそ、
死後の世界にも精鋭の軍馬と、揺るぎない軍事的な秩序を求めた――。

私には、そんなこだわりが静かに伝わってくるように思えます。

皆様は、兵馬俑の馬たちから、何を感じられるでしょうか。
ぜひ本編の映像とともに、お楽しみいただければ嬉しく思います。

 

画像:パブリックドメインの作品を元に作成

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